場所:Impact Hub Kyoto

京都市上京区油小路通中立売西入ル甲斐守町97番地 西陣産業創造會舘(旧西陣電話局)2階/3階

*2階か3階かは当日、現地に掲示します。

アクセス→https://kyoto.impacthub.net/access/

佐伯啓思(さえき・けいし)

1949年12月31日生まれ 奈良県出身

経済学者、思想家。

京都大学名誉教授。京都大学こころの未来研究センター特任教授。

共生文明学、現代文明論、現代社会論といった国際文明学、文明論を研究している。

近代の絶対的価値観である基本的人権、自由主義、民主主義について、その構造を根底から問い直し、問題提起し、その問題を乗り越えていくための思考を重ね、言論を発し続けている。

また日本の安易なアメリカ化を批判し、過度な成果主義、能力主義、市場競争の結果、近視眼的な判断で切り捨てられていく大切な物事を憂慮している。そのうえで、大量の情報の中で目先の断片的情報に翻弄されるのではなく、大局的な視座によって、過去から未来へとつながる本質的な知恵の発掘こそが重要と考え、近年では、東洋や日本の無の思想の意義を探るなど、近代のニヒリズムを克服する新たな思考回路を編んでいくことを目指している。

(著書)

『隠された思考』(サントリー学芸賞)、『現代日本のリベラリズム』(読売論壇賞)、『西欧近代を問い直す 人間は進歩してきたのか』、『反・幸福論』、『日本の宿命』、『砂上の帝国アメリカ』、『西田幾多郎 無私の思想と日本人』、『さらば、資本主義』、『大転換 脱成長社会へ』、『反・民主主義論』、『経済成長主義への訣別』、『「保守」のゆくえ』など多数。

*『風の旅人』における連載「ニヒリズムを超えて」
 

​第3回開催

2018年4月1日(日)

開場:12:30 開演13:00〜16:00

テーマ:

私たちは何を捨て、何を守るべきか。

近代文明の本質と、その行方

講演+質疑応答

ゲスト:佐伯啓思(社会思想家)

進行: 佐伯剛(風の旅人 編集長)

このたびのレジリエンスダイアローグは、佐伯啓思さんのお話を聞くだけの機会にするのではなく、質疑応答を充実させ、ともに考える場にしたいと思います。

​参加費1000円

*ドリンク、スナック等ご用意します。

 日本政府が掲げる経済成長優先の政策は、一人ひとりの暮らしを豊かにするという大義名分にも関わらず、数字が上がっても豊かさの実感に乏しく、富めるものはさらに富んで貧富の差が拡大する状況を作り出していますが、この構造は、一体どうなっているのでしょう。

 全体の生産性を増大させるために、一人ひとりの人間を機械部品とみなし、その効率をあげることが追求されるシステムの中では、効率を妨げる部品は、全体のマイナスになるからという理由で取り替えられます。あげくの果て、少数の最新の部品で全てをうまくコントロールすることが最善の価値となり、一人ひとりは、知らず知らず、そのシステムに従わされ、全体の流れを滞らせるものは不具合、不良品ということになります。

 この価値観や仕組みは、誰かに命令されてそうなっているのではなく、一人ひとりの意識の中に巧妙に刷り込まれています。差別や、いじめなどの集団暴力、そして、善良なる組織人の隠蔽や改竄などの犯罪行為も、根は同じでしょう。

 この意識の形成は、長い歴史を通して作り上げられてきたものように人々は錯覚していますが実際はそうではありません。

 江戸時代末期の欧米による圧力、そして大平洋戦争の敗戦以降、世界情勢の中でそう教育せざるを得なかった事情がありました。その結果、国家(組織)のために個人が犠牲になることも潔しという価値観が醸成され、そうした秩序維持に反せず、歯車として動き続けるのであれば、消費や所有や娯楽の利己的な活動は保証されました。物は豊富にあり利便性は向上したけれど、閉塞感と不安がつきまとうのは、自分の存在が全体の仕組みの中の一つの部品にすぎず、その中で役に立つかどうかを常に計られている感覚が抜けきらないからだと思われます。

 真の意味で、”豊かな人生”から遠ざかってしまうその構造は、社会を豊かにするという目標を掲げた近代文明の価値観やシステムに適応できるように作られた私たちの意識と一体化しています。 

 しかし、時代は急激に変化しています。これまでの量的拡大発展を牽引してきたシステムが、様々な歪みを生み、軋みを立てて崩れていく現実が日増しに多くなっているのです。

 この時代に生きる私たちは、まず第一に、私たちが当たり前のこととして信じて疑わない価値観が、いったいどういう構造のもとに出来上がっているのか冷静に認識する必要があるでしょう。そして、果たしてその価値観は、普遍性を持ったものかどうかを見極める必要があります。

 さらに普遍性といっても、西欧のように絶対的で固定的な神を想定せず、万物流転、諸行無常の精神の中で育まれてきた日本の歴史文化における普遍性という、別の視座による普遍性があることを知ることも大事です。

 第3回 レジリエンスダイアローグでは、今日の経済および社会の問題から、私たちが本当に大切にすべきことを改めて深く考え、少しでも知っていく機会としたいと思います。

風の旅人:2001年9月のアメリカ合衆国テロを受けて、2003年4月に佐伯剛により創刊。原理主義思想の闘争を超える新たな知の方法を模索して、20世紀の碩学 白川静、レヴィ=ストロースの愛弟子にて後継者である川田順造、サル学の河合雅雄、解剖学の養老孟司、動物行動学の日高敏隆、惑星物理学の松井孝典、植物学の岩槻邦男、西洋史の樺山紘一、環境考古学の安田喜憲、社会経済学の佐伯啓思、西欧哲学の酒井健、批評家の前田英樹氏、脳科学者の茂木健一郎、小説家の保坂和志、田口ランディなど様々なジャンルの知を編み込み、現在まで50冊を発行。

写真においても、石元泰博、細江英公、川田 喜久治、セバスチャンサルガド、ジョセフ・クーデルカをはじめ、戦後、日本および世界を代表する写真家から若手写真家まで、優れた写真の力で意識への働きかけを誌面を通じて行うとともに、大竹伸朗など世界的なアーティストや望月通陽も表紙カバーを作成。

2011年3.11以降、震災後の生き方を探るため、作家の宮内勝典、丸山健二、石牟礼道子、染色家の志村ふくみ、哲学者の鷲田清一、映画監督の小栗康平などへの佐伯編集長によるロングインタビューを収める。